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反逆の騎士【短編】

鉄のメイド騎士団TQ21/仮面のない舞踏会

 

TQ配達品=ルチア1名、セリエ1名
TQ配達先=ウェルス伯爵邸舞踏会
2nd Quest=尋ねびとミネルヴァ
 

仮面のない舞踏会

 
「馬から落ちるのも大概にしていただきませんと、伯爵様も御心配されて」
 
お付きの爺やから小言を聞きながら、二十歳ほどの青年が馬車に揺られている。
出先の町で療養していたものを、ようやく移動許可が降りたらしく、
傷に障らないよう最大口径の車輪を装着したキャリッジに身を横たえ、浮かぬ顔。
左肩の脱臼および打撲、右足首捻挫に親指不全(ひび)骨折。全治2週間。
そんな面白くもない、私邸までの帰り道、眺めていた外の景色に、
貴族邸の広大な庭が広がってきた。
  
「あ、あの女性は」
  
庭付き邸宅だけなら、伯爵家の跡取り息子が心動かされるはずもない。
明らかに使用人でない、見目麗しい女性が花の世話をしているのを見たからである。
ピンクがかったサテンのドレスに、リボンのついた日除けのボンネットを被り、
薔薇園の花たちに語りかけるような姿は、見る者の心を捉えて離さない。
馬車が遠ざかるにつれて、身を乗り出そうとした青年は、
爺やによって抱きとめられ、さらなる転落事故から事無きを得た。
 
「爺や、先ほどの邸は?」
 
「海商貿易で名を馳せたローゼンハイマー家の"夏の家"でしたかな?
 現在の所有者は、はて?」
  
俄かに爺やの口から、答えは得られなかった。
どのみち、怪我が癒えるまで彼に出来ることはないだろう。
以上、プロローグ終わり。
 
 
真相を明かせば、薔薇園の美少女(とは誰もゆってない)は、
クラーナでもなく、セリエでもなければ、庭師のアルバ爺ちゃんでもない。
あの日、賭け事に負けたルチアの罰ゲーム的な何かだった。
真夏の水遣りが甚だ不評なため(といっても、全盛期の面積の数10分の1)、
カード勝負により差配されたのだが、普通に世話するだけでは面白くないので、
ちょっとしたコスプレが追加される羽目になる。
 
「セリやん、こんなゴスロリ衣装とか持ってるんだ」
 
「趣味で縫ったはいいけど10年落ちって、よくある話じゃないですか」
 
セリエの10年前といえば、11歳である。サイズが合うはずもない。
針仕事に特化した彼女は、幼少の時分から廃棄される端材を拾ってきては、
きらびやかな舞踏会を夢見て縫い合わせてきたものである。
自分が着るのでなく、他の誰かに纏わせるため(だから余計にタチが悪い)。
 
「折角ですから、ポニーテイルでなく編み込みしましょう。
 パーティアップで、帽子から見え隠れするくらいがよろしいかと」
 
クラーナのスイッチが入り、ルチアの髪をいじり始める。
セリエはウエストを詰めたり、裾あげしたりの最終仕上げ。
いっぽう、コロナは───
 
「ロン!てめぇ、ヒールに画鋲仕込んでンじゃねーよ!」
 
そうやって出来上がったのが、
冒頭でみた薔薇園の美少女(とは誰もゆってない)である。
なお、馬車から青年が目にした、花に囁きかけるような可憐な佇まいは、
普通に賭けの勝者たちに悪態を吐いていただけだったりする。
 
 
そんな経緯がありまして、話の本筋は2週間後。
落馬の傷が回復した貴族青年が、"夏の家"を訪ねてきた。アポは無し。
あくまで通りすがりに立ち寄ったていで、薔薇園にいたクラーナに声を掛ける。
この日はルチアら二人が配達で出払っていたため、水遣りは通常業務。
クラーナも普通のメイド服で地味女(じみじょ)している感じ。
 
「この邸は、かつてローゼンハイマー家の別邸で、
 現在は鉄獅子将軍が買い取られたものと思っていたが、
 以前、この庭で見かけた女性は、エーベルバッハ家に連なる縁者だろうか?」
 
敵も然るもの、2週間の食っちゃ寝生活の間に情報収集は怠らなかった。
  
「あの、失礼ながら、見ず知らずの方に主人.. しかも女性の身辺を明かすのは」
 
「ふむ.. それでは、私の水筒に水を分けてもらえないだろうか。
 遠乗りに此処まで来たのだが、あまりの残暑に飲み干してしまったのだ」
 
(面倒臭え)
 
心の中で、クラーナは呟く。不意に彼女は貴族の背後に視線を逸らし、
ルチアの名(敬称込み)を呼んでみた。当然、貴族の彼は後ろを振り向く。
振り向いた一瞬の隙を突いて、クラーナは水筒に如雨露の水を注ぎ込む。
 
「あら、失礼。見間違えたようですわ。水筒のお水、これでよろしいかしら?」
 
「うむ、手際がよいな。礼と言っては何だが、我が邸で主催する舞踏会に、
 お前の主を招待したいのだが、お渡ししていただけるかな?」
 
(疑問その1。なぜ招待状が予め用意してある?
 疑問その2。水筒に水を汲んだの、私だよね?)
 
クラーナは封書を受け取り、形ばかりの会釈をする。
 
「エスコートは私が迎えにあがるので、当日は此処で待っているとよい」
 
「いえ、現地集合で」
 
間髪入れずに返したクラーナに、貴族青年はたじろぐ。
というより、主の意向もなく即答したのに面食らったというか、そんな感じ。
 
(鉄獅子将軍かミュンスター侯を同伴させたら、泣いて逃げ出すんじゃね?
 ───主催はウェルス伯爵と、子息フリードリヒ.. ぷっ)
  
 
そんな経緯を踏みまして、話は更に1週間後。
ウェルス伯爵邸舞踏会に紛れ込んだのは、来賓ルチアと付き人枠のセリエ。
ルチアの装いは、例の薔薇園の美少女(とは誰もゆってない)から、
トッピング&フレーバーを追加したもの。一張羅、これしかないから仕方ない。
 
「つか招待者のウェルス伯爵の息子って誰だよ?全然、面識ねンだけど」
 
「貴族の義務みたいなものです。旧薔薇邸に居を構えて数ヶ月、ようやく、
 巡ってきた舞踏会デビューじゃありませんか。気張っていきましょう」
 
本来ならウェルス伯子息のエスコートを受けて会場入りするところ、
招待状ゲット済みをよい事に、ビュッフェの並ぶ会場本丸まで達したのは、
潜入工作に手慣れたセリエの手引きによるものである。
 
「おい、セリやん。これ全部、食っていいのかな?」
 
「何のために私がついてきたと思ってます?もしもの場合、
 ウエストの仮縫い、2〜3本抜きますので堪能したってください」
 
言われるまでもなく。他の来賓が顔合わせ(本来の目的)のため、
自己紹介に余念がないのを横目に、ほぼ手のついていない銀皿に立ち向かう。
ガワだけは旧薔薇邸に住んでいても、普段食べているのは賄いなので、
ここぞとばかりに、第4胃まで詰め込む勢い。
 
「クラーナたちのも、タッパに確保してくださいね。私も努力してますが」
 
そんな感じで無双を続ける二人だったが、やがてスライド式に品の良い紳士や、
落ち着いた雰囲気の老婦人がルチアをタゲってくる。
言葉遣いなどに不安を抱えるルチアが冷や汗にフリーズしていると、
そこはセリエが、すかさずインターセプトする。
 
「******、*********。*****?」
 
およそ上流階級のセミリタイア層が解するとは思えない異国の言葉で、
幾らかの談笑を持ちかければ、地雷を踏んだような表情を見せて退散していく。
片言とはいえ、数ヶ国語を操るのは諜報部門の嗜みである。
この手で邪魔者はかわせる!そんな考えが過ぎった矢先だった。
 
「******」
 
流暢とは言えないまでも、同じ言葉で挨拶してくる者があった。
10代かなり下のほう、まだ子供と認識できる年齢の男の子である。
 
(不味いです。私の会話能力では、エスプリ攻撃されたら対応できません)
 
(私が何とか出来るワケないだろ!自分で蒔いた種は自分で刈り取れ!)
 
耳打ちし合う言葉が聞こえたものか、彼は普段使いの言語で語りかけてくる。
もう、逃げられない。
 
「西方大陸、ファイゼラの言葉ですよね?僕も留学準備のために、
 家庭教師から学んでいるところです。本当は、まったく自信がありません」
 
セリエも観念して、人避けのための方便だと白状すれば、
彼も咎めることなく、あるある、で済ませて和気藹々になってきた。
 
「えっ、じゃあ君もウェルス伯爵の御子息なんだ?」
 
(も?)
 
タッパが鮨詰めになった二人は、退散モードも兼ねて令息と中庭へ連れ立つ。
歩き語りのうち、令兄の招待客だと分かると、さらに人懐っこさが増していく。
社交界で貴族の仮面を被らされても、お兄ちゃん好きの子供っぽさは隠せない。
 
(このコの懐きようをみる限り、きっと兄貴もいい奴なんだろうな)
 
話が弾むいっぽうで、意図しない問題も明るみになってきた。
ルチアとセリエは示し合わせたわけではないが、邸を退散する予定だったので、
何となく人気のない場所へと足が向かう。裏庭は私有森へ続いている様子で、
ずらかる身としては、弟君には一刻も早く踵を返して欲しい状況である。
 
「ねえ弟君。私たちは、そろそろ家に帰ろうと思ってるんだけど、
 この辺りは寂しいし、夜も暗いし、君も帰ったほうがよくね?」
 
(帰られたほうが、よくありませんか!)
  
セリエがルチアの脇腹に肘を入れつつ、小声で言葉使いを指導する。
二人の心配をよそに、弟君は怖がる気配など微塵もみせない。
 
「僕の名前は、ハインリヒと言います。父様から爵位継承されていないので、
 そのまま呼び捨てにしてください。
 この辺の森外れには兄様の修行場があるから、慣れたものですよ」
 
にこやかに受け答えながら、やや彼女たちを先行して木立の端へ手招くと、
プライベートな訓練場らしきものが見えてきた。
ぼろぼろに刃毀れした鉄剣と、打ち込み用に藁を巻いた立ち杭人形。
その他、筋肉を鍛錬するための道具が散見される。
 
(あの藁人形、何で頭の後ろに馬の尻尾がついてるんだろう)
  
二つある立ち杭のうち、片方は後頭部に馬毛が。
もう片方には胸の部分にカボチャが2個、器用にも括りつけられている。
何処か馴染みある装飾に、ルチアは後ろ頭に手を遣ってみるが、
この日はポニーテイルでなく、クラーナに手入れされた編み込みが指に触れる。
 
「おい、ハインリヒか?隣にいるのは、誰だ」
  
「兄様!」
  
ほぼ間髪入れず、鍛錬場の主登場。
 
「今宵、招待した来賓とはぐれてしまってね。
 ところが侍従に招待状を確認したら、すでに来場しているというじゃないか。
 邸内にも見当たらず、こうして庭まで探しに参ったのだが、
 よもやハインリヒと共にあるとは、いささか驚かされたぞ」
 
「ああ、ルチアさん。これが、僕の兄のフリードリヒです」
  
先程の会話から、直接面識がないよう推察されたため、弟君が紹介する
兄のほうは遠目から、1/144スケールでルチアを目に焼きつけていた模様。
 
「このたびは、お招きに与りまして。フリードリヒ.. ぷっ様」
  
どうにか礼の対応は恙無くやり遂げたと自画自賛。
でも主催の御令息は、語尾の"ぷっ"が気にかかった様子。
これにも付き人役セリエが火消しに割って入る。
 
「主はセレシア地方の生まれでして。
 固有名詞(人名)に多少の差異が生じるのですよ」
 
「おお、セレシアといえば領地の併呑と解放が繰り返された悲劇の土地。
 ご苦労を重ねられたのですね」
 
苦労したのは事実だが、貴族に言われるのは釈然としない。
ともあれ、邸内に戻って舞踏の相手を所望するフリー(以下略)と裏腹に、
戦利品のタッパを抱えたルチアらは、貴族邸から立ち去りたい状況である。
どうしたものか思案を巡らすうち、令息兄弟とルチア+付き人を遠巻きする、
不穏な気配に気づく。彼らの護衛役かと思いきや、どうも違うようだ。
 
(相手は散開して4人。構えるは長刃=片手剣が2人、短刃=ナイフが2人。
 狙いは───まさか、ハインリヒ坊やか!)
  
じりじり寄ってくる視線の先に襲撃者の目標を察知したルチアが、
弟君との間に身を入れて庇う姿勢をとれば、
残る二人は秘密基地に飛びついて、それぞれ迎撃武器を手にする。
フリー(以下略)が千本ノックに明け暮れた特訓用の鉄剣。
セリエが手にしてルチアへ寄越したのが、干草刈りに使う細三叉の鍬農具。
 
「セリやん.. 貴族のボンボンに競り負けたんか?」
 
「失礼な!剣の持ち手が臭そうだったから、葛藤の末に放棄しただけです」
  
普段は掃除道具の扱いに長けたルチアだったが、多人数相手に護衛立ち回りでは、
バランス悪くて長柄の農具では、いささか不利かと思われる。
まずはナイフ持ちの男が単独で向かってきた。彼女が危惧したとおり、
繰り出された三叉の穿刺を掻い潜って、凶刃を突き立ててくる。
が、ルチアの肉を抉るまでは到らなかった。
  
「くっそう.. 先に片づけたの1人だけかよ」
  
掻い潜ってきた暴漢のナイフを持つ肩がルチアの足に止められ、届かない。
薔薇園に佇む美少女(とは誰もゆってない)にあるまじき立ち合いから、
男の顔近くを突き抜けた穿刺が、旋円を描く強打に変化する。残るは3人。
いっぽう、剣を構えるフリー(以下略)には、誰も向かって行かない。
狙いは弟君なのだから、当然の成り行き。戦況把握に努めていたセリエが、
貴族兄に近づいていき、剣の束に手を置いた。
 
「殿方として思うところおありでしょうが、弟君をお守りしたいなら、
 当家のお嬢様に任せてみては如何でしょう?」
 
初めて会話した付き人の言葉に、兄君は意外なほど素直に剣を手離していた。
その後、対峙する暴漢3人の前を横切って、ルチアに剣を委ねる。
彼女は軽く振って感触を確かめた次の瞬間、ふたたびセリエを呼ばわる。
 
「セリやん、もうちょっと腰回りに余裕もたせてくれ。
 あと、タッパを預かっといて」
 
「それくらい、自分の筋肉でブチっといっちゃいましょうよ。
 え゛ー私がタッパ2つ持つんですかぁ?」
  
着慣れぬドレスの引き攣りが、邪眼スクリプトの構築を阻害したらしい。
やがて戦闘再開。邪眼発動/ハインリヒ弟君を守りつつ、3対1乱取り。
 
 長刃×2と短刃×1。弟君を背にしている状況で、流血沙汰は避けたい..
 こないだベロ(※薔薇騎士2ベロニカ)が使ってた、
 小手先技【初歩編】を使いこなせば、充分に立ち回れる!
 
乱撃から間もなく、違和感をおぼえたのは暴漢たちだった。
何度撃ちかかっても、ルチアに剣が通らない。
元より伯爵家子息に危害を加えるつもりも無かったが、彼に一歩も近づけない。
そのうち暴漢たちは気づく。
 
 違う.. 近づけないんじゃない!
 
 刃を合わせたときに、詰めた間合いを絶妙に押し返されてるんだ!
 
 信じられないっ!剣筋のみならず、立ち合いまで操作されるなんて!
 
これが、ローゼンハイマー薔薇騎士ベロニカ本来の剣である(はずだった)。
さらに外縁で目の当たりにしているフリー(以下略)にとっても、
展開されている剣の撃ち合いは、理解を超えるほど難解で、美しかった。
何か心無し、涙ぐんでいる。
やがて痺れを切らした暴漢の1人が、ルチアとの対峙を諦め、
セリエのほうへ向かってきたかと思うと、ナイフを閃かせ凄んできた。
 
「おとなしく、その子供を渡せ!危害は与えない。交渉に使うだけだ!」
 
考えなしに語っているのだろう。言いたいコトは分からなくもないが、
一言一句が干渉し合って筋が通っていない。
凄まれたセリエも、まったく危機感を抱いていない。
 
「どうして、ルチア様が私を"邪眼"の影響下に置かれなかったか、
 想像もつかないのでしょうか?"必要が無いから"に決まってますのに」
  
セリエが、羽交い絞めしていた暴漢の手を叩(はた)いて、前へ進み出る。
それを追う形で、手にした刃物を彼女に振り翳した瞬間、
関節など、いたる部位に痛みが走った。手首、肘、肩、膝、お〇ん〇ん。
 
「痛っ!痛ぇえええーっ!身体中が痛ぇーっ!」
 
激痛で転げ回るものの、それが更なる痛みを誘発する。
そして押さえていた肘から手を開いたとき、着衣越しに刺さる待ち針をみる。
これが全身に仕込まれているのかと思うと、ぞっとする。
針を抜くにも痛みが走るため、迂闊に手足を動かすことも出来ないが、
やがて痛覚が麻痺してきたのか、身体の自由が戻ってきた気がしてきた。
 
「へっ.. へへへっ.. この女ァ!」
 
ちょっとだけヘヴンを覗き見たような表情でセリエを追う男。
やがて下半身が湿りを帯びてくるのに従い、自身の股間に目を遣れば、
失禁垂れ流し状態な状況に絶句して、ふたたび足が止まる。
 
「痛覚ってゆうかぁ、筋肉が麻痺しちゃえばそうなるって分かりますよねぇ?
 脱糞までやらかさないうちに、早くお家に帰ったほうがいいですよぉ」
 
(セリやん、えぐいな)
 
勝負あり。股間を押さえて泡吹く相棒をみて、戦意が萎えないはずがない。
セリエの毒牙にかかった1人は回収出来ないので、3人揃って投降する。
弟君が、そして兄君も、ルチアらに感謝を言葉にした。
 
「お礼を兼ねて、夕食会にお招きしたいのだが」
 
「いや、今この瞬間が罰ゲームなのに、何で継続すんの?」
  
ルチアが剣を鍛錬場へ置きに行ったとき、撃ち込みの立ち杭が目に止まる。
何千回、何万回と挑みかかった努力のあとも伝わってくる。
いましがた、手を取ったときの、あのゴツゴツした手のひらが思い出される。
 
(ふっ、まるでカボチャ胸と馬毛頭の女が、不倶戴天の敵と言わんばかりだな)
 
そう胸を過ぎった瞬間だった。猛烈な悪寒が背中を駆け上っていった。
直接、目を合わせないように背中越し、セリエと談笑する兄君を振り返り、
手のひらで顔を翳してみる。ふと、何かが降りてきた。
 
(あいつ、まさかの───坊ちゃ仮面だった!)
  
  • 2020.08.29 Saturday
  • 00:00

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