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反逆の騎士【短編】

鉄のメイド騎士団TQ20/女焔−おんなほむら−

 

TQ配達品=今回配達完了済み

TQ配達先=配達完了後に帰還途中
2nd Quest=現在ミネルヴァ目撃情報はありません
 

女焔−おんなほむら−(後編)

  
遠くで聞こえる長い轟き。重い空気は荷台の上にあがってくるまでになった。
 
「やべぇぞ、エル。このままじゃ、捕まっちまう!」
  
荷馬フィンケの手綱をひくラファエラに、背後からコロナが、
フード付きローブを羽織らせると、すぐ背後にまで迫る雨音を振り返る。
そんな雨養生が何の役にも立たないゲリラ豪雨を食らったのは、
それから間もなくのことである。
 
「うーわ、箱(荷台囲いの内側)に水が溜まってきた。
 隙間から流れ出ていくより、嵩の増すほうが多い!」
 
「きゃあぁ!御者台に溜まった雨水が服から伝わって身体をのぼってくる!
 心底、気持ち悪い」
 
まもなく右手に、村で聞いた家主不在の邸が見えてくる。
ラファエラは荷馬を方向転換させ、玄関張り出し屋根のポーチまで突っ込ませた。
廃墟だと事前に知っていたので、やりたい放題である。
 
「うひゃあ.. もう、いろいろ手遅れって感じ」
 
逸早く荷台から飛び降りたコロナは、脱いだブーツを逆さに向けて水抜き。
ラファエラはポーチの柱に荷馬を繋留したあと、ローブを雑巾絞りにしている。
この日は二人して、秋撒きの種の集配で王都北方エリアを追われていた。
ようやく家に帰れると喜びもつかの間、下着まで濡れネズミな有様だった。
重い両開きの玄関扉をくぐり、まずは寝場所を求めての邸内探検である。
  
「ちょっと、ロン!何してるのよ」
  
吹き抜けロビーを右に進んだ先の食堂っぽい大部屋で、ラファエラは、
早速つまみ食いやらかしているコロナを難じた。
長テーブルの上に置いてあった背負い鞄を探り、焼き林檎に齧りついている。
彼女にしてみれば、廃墟邸で見つけた食べ物を口に入れる暴挙が信じられない。
 
「いや、だって村で先客1人いるってゆってたじゃん。
 古いもんじゃねーし、食欲そそる匂いしてるし、これ、そいつの持ちモンだぜ?
 後先なるけど、カネ払ってやりゃいいじゃん。腹減って堪んねーよ」
  
貧民窟育ちの傍若無人に、ラファエラは空いた口が塞がらない。
2つあった焼き林檎のうち、1つを勧められるが、人間の尊厳を賭けてこれを固辞。
 
「えー普通の林檎だったら、フィンケにも食わしてやれたンだけどな。
 およ?こっちのデカい皮袋は何だ?」
  
本来の所有者に残しておく選択肢はないのか。コロナの行動に呆れながらも、
さらに発見した2つの水袋には心惹かれるものがあった。
  
「風呂で身体拭くのに丁度いいじゃん。浴室探して、代わりに持ってってやろうぜ」
  
そう、あくまで代わりに運んであげる。そんな言い訳で自身を納得させつつ、
水袋を両肩に担ぐコロナの所業を黙認するラファエラ。
※ここまでのキャラ配置図
 コロナ&ラファエラ=大食堂 ミネルヴァ=シュタイアー女領主私室
 夜盗×2=2階右手私室
  
「お!あっち、厨(くりや)じゃねーのか?食いモンあるかな」
 
「ちょ.. こんな廃墟に残ってる食料なんて、見れたものじゃないでしょ。ロン!」
 
二人して食堂から繋がるキッチンへ移動してみると、意外に小奇麗なのが目につく。
ごく最近、水を流した形跡のあるシンクと、引き出しからは錆のない包丁類。
乾燥させてある肉は判断しかねるが、日干し回収したばかりと見られる玉葱など、
明らかに張りがあって瑞々しい。ラファエラが小声で、尋ねてくる。
 
「ねぇ、これも.. 先着の旅人が置いたものだと思う?」
  
「微妙(肉は血合いが悪いし、玉葱は生で食うのも.. な)」
  
いましがたの焼き林檎と違い、厨房には食欲をそそるものが見当たらない。
コロナは残りの焼き林檎1つをラファエラに手渡すと、無言で頭を横に振った。
※ここまでのキャラ配置図
 コロナ&ラファエラ=厨房 ミネルヴァ=大食堂
 夜盗A=女領主私室 夜盗B=浴室
 
「それより、早くベッド探して眠っちまおうぜ。
 雨が止んだら、さっさと出発したい気分だ」
 
「私は、やーよ。風邪引かないように、ちゃんと身体を拭いて、髪も乾かして」
 
※ここまでのキャラ配置図
 コロナ&ラファエラ=吹き抜けロビー左側を目指して、食堂に戻る
 ミネルヴァ=廃墟邸2階、3室あるうち、左最奥の部屋へ
 夜盗×2=食堂のほうへ歩きかけるも、2階の足音を聞いて中央階段をのぼる
  
「おおっ!ベッドあった、あった。げふっ.. 何だ?これ」
  
寝心地を試そうとダイブしたコロナだったが、舞い立つ埃に咳き込んでしまう。
それなり生活感のあった厨房とは異なり、掃除も保守もやっていない雰囲気だ。
それでもシーツ1枚をめくれば、一夜を明かすには申し分ない高級寝具である。
終始、呆れ顔で通路側から目で追っているラファエラを背に、
寝転がっていたコロナだったが、やがて不自然に、こっちを向き直る。
 
「何?」
 
「いや、何って.. 怖ぇーんだよ、あの絵」
  
コロナの指差す壁を見ると、暗がりで不鮮明であるが、
後ろを向いた女性が振り向きざま、凄んでいる得体の知れない人物画をみる。
コロナにも一抹の良心の呵責があって、負の感情を増幅させているものかと、
漠然と思い巡らせるラファエラだったが、彼女にしてみても、
見つめるうち、やっぱり怖くなってきた。
 
(何で、あの女性、後れ毛を噛んでるんだろう?)
  
背景に立つ焔(ほむら)、それに煽られて舞い踊る髪を、
必死で抑えようとしている、執念と自制の狭間を彷彿させるような画だった。
正視に耐えられなくなり、コロナに視線を戻すと、すでに彼女は夢の中。
微かな寝息を見ているうち、一気に馬鹿馬鹿しくなった。
 
(私は、身体を拭いてから寝よう。あ、こっちに個室ある)
  
※ここまでのキャラ配置図
 コロナ=女領主私室にて爆睡 ラファエラ=水袋を手に浴室へ
 ミネルヴァ=2階左側個室にて家探し
 夜盗×2=2階右側個室から順番に侵入者確認
  
あらかじめ、水袋2つを浴室に放り入れると、
荷馬車から降ろしていた携帯袋から、四半刻の小ランタンを取り出し、
頼りなげな灯りで内部を照らしてみる。想像していたより、不潔な感じはない。
ふと内側出入り口に、介護杖が立て掛けてあるのを見つける。
 
(此処の家主は、それなりの高齢者だったのかな?)
 
倒れてこないよう、ラファエラは杖を手に取り、傍らに寝かせておいた。
木桶があるのを見つけ、まるごと水袋をはめて、その状態から口紐を解く。
手拭いを水に浸け、湿った気持ち悪い上着を腰まで引き下げた、その時だった。
バキャアーッ!と天井を突き破る派手な音を立てて、何かが落ちてきた。
最初、コロナがやらかしたのかと勘繰ったが、そんな筈もない。
それならば、考えられるのは廃墟邸に先着した旅人か不法住人である。
 
「きっ、きゃああああーっ!」
  
ラファエラ、絶叫(乙女寄り)。
手元以外よく見えない暗がりの出来事で、相手の素性も判らない状況だったが、
寝室のコロナに報せるための乙女寄りでもあった。
 
「ごめんっ、いやっ、私も女です!じゃなくて!」
  
今なお小ランタンの灯りが届く範囲外にいる人影が弁明してくる。
相手が女性であるのは、声色からも間違いないだろう。ただ次の瞬間、
彼女が刃物を抜くのが見えたため、ラファエラは傍らの介護杖を拾い、
武器落としと、逃げ出せないよう手足への打撃を試みる。
 
「ゼクステット・インプルス(6連突き)!」
  
「え?わっ、ひぎゃああ!」
 
刃物は確実に飛ばした。だが膝立ち状態から繰り出したため踏み込みが使えず、
相手の身体には当てられなかった。そして、かわしたときに倒れ込んだ状況で、
ラファエラの小ランタンを奪い取り、そのまま浴室から飛び出していった。
灯りを持っていかれた彼女は、しばらく視界が回復せず身動き出来ない。
 
「ロン!何やってンの。そっちに賊が行ったわよっ!」
 
「んー、らりぃ?"きゃあー"らって。乙女みたいら声らすンりゃれーよ」
  
いっぽう、寝室でミネルヴァと対面したコロナは、依然として夢見心地。
※ここまでのキャラ配置図
 コロナ&ラファエラ=女領主私室 
 ミネルヴァ=私室から出た瞬間、夜盗たちと目が合い隣の使用人部屋へ
 夜盗×2=ミネルヴァを追って使用人部屋に向かう
  
その前に夜盗の相方は、ミネルヴァが飛び出してきた寝室に立ち寄る。
ドアノブを捻り、警戒態勢で室内をひと通り、その場から確認する。
ベッドに使用された形跡がある他は、誰もなく、静まり返っていた。
 
「おい、何やってる?獲物は隣に潜り込んだぞ」
 
「侵入者が1人とは限らんだろ。まあ、女1人なら金目のモノは引っ剥がして、
 使えるところは使って、後腐れなくバラすか」
  
ふたたびドアが閉じられると、視線の通らない浴室角に隠れたラファエラと、
ベッドの向こう側に転がり、伏せていたコロナが言葉を交わす。
 
「どっちにつく?」
 
「女性に決まってるでしょ」
 
「だろうな」
 
そんなやり取りをしつつ、ラファエラは丸腰のコロナに、
浴室で拾った小刀を渡す。自身は木製の介護杖を頻りに素振りしている。
やがて部屋の外から、隣室を殴打する激しい物音と罵声が聞こえてきた。
 
「お、立て籠もりか?善戦してるみたいじゃねーか。
 どっちにしろ、野郎二人どうにかしないと、俺ら安眠できねーからな」
  
「相変わらず、着ている服が濡れてて気持ち悪いんだけど?」
  
戦闘モードで部屋を出ようとするコロナに、ラファエラは気乗りしなさそう。
ドアを攻撃する音が響いているうちは、余裕ありというところか。
 
「んじゃ敵を生きて帰さねー覚悟で、真っ裸(マッパ)になって踊るか」
 
「万にひとつ取り逃がしたら、どうしてくれるのよ」
  
折り合いつかないまま、ドアの破られたらしき気配がする。
思ったほど根性なかった。彼女たちにしても、余裕ぶっこいていた訳ではない。
コロナは水浸しになったブーツが動きを妨げないか、手入れに腐心していたし、
ラファエラは杖を振るバランスが気に入らない様子だった。
本来、武器ではないのだから当然だが。
 
(まあ、バラされるまで1〜2ターン猶予あるっぽいから、まだ大丈夫だろ)
  
「おい、エル。女の姿が見えないぜ?」
  
二人が隣室へ踏み入ったとき、夜盗たちは室内の家具調度品を総移動させて、
追い詰めたはずの女性が隠れた先を家探ししている様子だった。
図らずも、二人vs二人の男と女。相手は使い慣れたふうのナイフを翳している。
 
「おい、どっち使う?」
 
「巨乳(コロナ)」
 
「だろうな」
  
ラファエラがむかつく暇もなく、夜盗らの先制攻撃。
二人に襲い掛かかられたコロナは、相手の間合いで手首や肘をはたきながら、
ナイフの白刃をやり過ごす。そういうのを数回、繰り返すうち、
夜盗の1人が血の付着したナイフを床に落とす。
 
「おい、何やってるんだ!」
 
仲間から怒鳴られた夜盗は腕を押さえながら、片膝をつく。
ナイフの血はコロナでなく彼のものだった。見る間に、血溜まりが出来ていく。
そして、もう片方の夜盗も左腕の動脈を断ち切られ、噴いた血飛沫が壁を汚す。
勝負あり、か。片足立ちで膝を抱えたコロナが、
ブーツの先に仕込んだミネルヴァの小刀を、暗がりの中で閃かせている。
 
「ヴァイセ・トイ(白い魔弾)。立ち合いで全然見えてなかったようだけど、
 お前ら、ちゃんと眼ぇ開いてンのか?」
  
煽られた夜盗(血飛沫あげたほう)は逃走を図るため、
ドア前に立っていたラファエラに向かって、肩から突っ込んでいく。
利き腕は左腕の傷口を押さえているため、大体こんな感じになる。
 
「え?ロンを選んだあとで、今更こっち来られても困るんですけど」
 
貧乳忌避の恨み骨髄。ミネルヴァのときと違い、
両脚完全に地につけた介護杖版6連突きが、夜盗を襲う。
 
「けっ.. 両肩を砕いただけかよ。鈍ってンじゃねーのか?」
 
「冗談っ!両脚まで圧し折ったら、誰が荷馬車の台まで連れていくのよ?」
 
「あ、こいつら官憲に突き出す気なんだ」
  
茶化すコロナに、冷静に返したラファエラ。
もっとも、夜盗ら二人が明日朝まで失血タヒんでいなければ、の話だが。
厨房でみた乾し肉や畑の作物から推察して、
村人を悩ませていた狼藉者に間違いないだろう。
なお彼女たち、いずれも、
この使用人部屋に踊り入った理由が頭からすっぽ抜けている模様。
 
※ここまでのキャラ配置図
 コロナ&ラファエラ=1階使用人部屋にて、勝利のポーズ
 夜盗×2=鉄のメイド騎士団の前に、敢え無く沈黙
 
そしてミネルヴァは、コロナたちの足下(床下)で、
気を失うように寝落ちしていた。
 
  • 2020.08.22 Saturday
  • 00:00

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