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反逆の騎士【小説版】

導かれし黒蝶1-3



 










第103系統"途絶えたはず"のミュールハウゼン家章

エーレン・ヴォルト
「契約の金剛石章」


−鋼鉄の騎士−より
その圧倒的な巨塊を見よ
我らは、激しい熱と、果てしない冷たさを知っている
我らは、鋲の力で手を握りあう!

−黄金の騎士−より
羨望やまぬ、富と権力の象徴
だけどね?
絵本のなかの美しく聡明なお姫様は、絶対にあれを結婚相手に選ばない..

−ダイヤモンドの騎士−より
内なる輝きを秘めた最上の個体
それがまさか..
蚤の仕事で砕け散ることになろうとは!

−なまりの兵隊−より
邪魔だ! 踏み潰してしまえ!
 

Ein Ritter 1-3
「導かれし黒蝶編−死神の舞い降りるとき−」


夜半過ぎ、黒蝶の城を離れる5頭の騎馬があった。
見習い騎士ファイト率いる、黒蝶の主戦騎兵だった。

(家章もろとも、滅んでしまえばいい.. このまま南へ落ちれば、ロレンティウス軍をかわせる!)

この一団が、南方から黒蝶城へ迫る 「氷葬騎士団」 によって殲滅されることになる。
南位上将軍ディオン元帥の懐刀であり、ロレンティウスへの牽制を含んだ、
西位"魔女"将軍マルガレータの軍事行動であった。

「アイス・ハイリゲン(氷の3聖者).. その身で体感し、そして死ね」

エーレン・ヴォルト 「契約の金剛石章」 を家章とするミュールハウゼンの魔女が帯びる強大な魔力、
夏の夜にまとわりつく氷雪の触手が、彼ら逃亡騎士団の生命の流動を止めた。

一方で、北面からロレンティウス率いる 「鉄獅子騎士団」 を先行する見習い騎士ラファエラは、
無人と化した市場町で単騎のセシリアと遭遇戦を展開する。
ラファエラを除く騎馬隊は、セシリアの献言によって黒蝶城へ強行した。

「他の男たちに何言ったのよ?あんた」

1対1に持ち込まれたラファエラが訝しくセシリアに問う。

「黒蝶の城では超絶テクのメイドと男を知らない小娘どもが、
 手ぐすねひいて待っているとか教えたら、あとは見ての通りだ」

「あんたらしいわ.. 鬼か悪魔の所業とはこのコトね」

セシリアとラファエラは互いに下馬し、剣を抜く。

「包囲を待たずに独断先行してくれりゃ、先鋒隊は全員、ルチアの餌食になる。
 それで・・・ 処女膜は破ってもらったのか?エル」

「ふふ.. 当然でしょ」

言葉巧みな心理戦を仕掛けてくるセシリアに、ラファエラは親指を立てて応戦する。

「毎朝続けられる将軍様直々の剣術特訓.. 
 私が睡眠不足なのに気付かれたロレンティウス様から問いただされた私は、
 正直に告白したの。お呼び出しを待ち続けて眠れない日々と、私の覚悟をつらつらと・・・
 そしたらいきなり私をお姫様抱っこして将軍様の私室へ..
 そのあとは・・・ ぐふふふふふ、ぐふぐふぐふぐふ」

「こ、この女.. 存在自体が哀れすぎる・・・」

ラファエラの独白劇場に背中を向け、うずくまるセシリア。

「そんなに感動してくれたの?」

「ふざけんなっ!お前の口上に手首が笑っちまって、剣が握れねーんだよ、ちくちょうっ!」

単騎同士による白兵戦は仕切り直し、先制を取ったセシリアの剣が
ラファエラのレザースカートを切り裂く。

「けっ.. パンツ丸出し。さすがの将軍様も、こーゆー技は仕込んでねーだろ。
 つーか、お前のガードの甘さは女としてどうよ?」

「やかましいっ!体幹防御が剣術の基本だもんっ」

セシリアの剣技は、受けの剣が反応しにくい相手の革鎧の端を狙いすまし、
次第に斬撃の痕を増やしていく。

「かくなるうえは全裸に切り刻んで、将軍様の前に立てねーザマを晒してもらおうか?」

「セス.. あんたを倒し、服を奪い取って将軍様を追わせてもらうわ!」

第 1 Round   確変のセシリア vs 委員長ラファエラ [着衣剥ぎ取りデスマッチ]

幾度かの鍔迫り合いを経て、互いに必殺の一撃を繰り出した。
タランテラの寸撃から絶妙のフェイントを織り込んだ、セシリアの斬撃。
そして、踏み出した運足が6方向のフェイントを織り成す、ラファエラの突撃が交錯する。

ラファエラの上着一枚を切り裂いたセシリアの剣とは裏腹に、ラファエラの突きは
横薙ぎの強打に変化して、剣の腹でセシリアの腕の骨を砕いた。
セシリアは剣を落とし、戦意喪失を示す。

「セス、悪いけど・・・」

「ネンネじゃねーんだ。自分で脱ぐよ」

痛む腕を庇いながらセシリアは軽鎧を外し、サコートを脱ぎ去る。

「剣の角度には注意していたけど、まさか腹で撃つとはな。甘ちゃんな女だぜ」

「甘いのはお互い様よ。セスだって、最後まで私の服しか狙ってこなかったじゃない」

下着姿になったセシリアは、戦利品の服をラファエラに放り投げる。
高々と舞った戦利品のそれは、受け取る構えを見せたラファエラの意に反して、
背後に流れるドブ川に浮いた。

「ちょ.. ひどっ.. !あんた、たまには騎士道を全うしてよ。もう!」

それでも汚水を含んだ着替えを回収し、濡れた裾を雑巾絞りにしながらも、
ラファエラは帯剣して馬に向かう。

「こっちに来いよ。お前の利き腕も、折ってやるぜ?」

「あんた、まさか.. 」

木の根元に身を預けたまま、セシリアは厭世的に笑った。

「エル、お前の腕じゃルチアに及ばねーよ。死に急ぐことはないじゃねーか?」

まさかわざと自分に腕を折らせたとでもいうのか、セシリアの言葉よりもなお、
ラファエラにとっての騎士道精神が馬を黒蝶の城へと進ませる。
翻意しないラファエラを見送るセシリアは、いつものように悪態を風に乗せた。

「勝手にしやがれ.. 頭ンなかで桜が舞ってる女は手に負えねーよ」


その頃、黒蝶城では東塔の石階段を登る鉄獅子の先兵が、メイド服を身にまとい、
踊り場に立ちはだかる【死神】を目撃していた。

大アルカナの示す、人の最終覚醒。【世界】へと辿りつく道筋は21通りあると言われている。
【死神】とは、なかでも最も忌み嫌われる経路に他ならない。
人が人を殺めてのち魂が救済されるなど、あってはならないからである。
そして長い歴史の渦中では、【死神】との対話から【世界】を手にした者など存在していない。
そんな孤独な因果律に、ひとりの少女が挑む。

年端もいかない子供が生きるために、他人の生命を剥奪した。
その命題はいまだ終わりを告げることはなく、夜毎思慮を巡らす求道者に狂気を囁き続ける。
(それでも私は、考える営みをやめない.. )
小動物を咥えた子猫は、もしかすると人である自分よりも高みにあるのかも知れない。
草木や虫ケラにさえ教えを請う。
那由多の宇宙に雄飛した迷える魂は、あらゆる事象を第3空域の座標から解析する、
禁断の覚醒を遂げた。

ルチアの青い瞳の左側が、かすかに碧く移ろう。
魔女信仰に彩られた忌まわしき"邪眼"が、10フィート四方の戦闘領域を侵食する。

シュメッターリンク 「導かれし黒蝶」 ルチア・ミュンスターの振るう剣が、
戦場内の誰よりも早く、躊躇なく、精密かつ大胆に敵兵の息吹を摘み取っていく。

吹き上がる、自分でない誰かの血飛沫が、かりそめの生き残りを告げる。
いったいどこまで、この道を進めばいいのだろう?

それでもまだ【死神】は、
【世界】に至る秘密をルチアの前に解き明かしてはくれない・・・
 

  • 2012.11.04 Sunday
  • 00:00

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