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読書感想文SP

53「源氏物語宇治十帖【浮舟】」

 

★超速あらすじ★
前回未遂に終わった匂宮、今度は完全犯罪(現代風価値観)やらかす。
匂 宮「都会の女は、ハメ撮り写真くらいふつーだよ」
浮 舟「そうなのですか?」
薫大将「浮舟..お前、マヂか」
浮 舟「だ、騙された(死のう)」
右 近「メール消去(デリ)しなくても..記念にとっておけばいいのに」
浮 舟(リベンジポルノ送りつけられたなんて、言えない)
 

 :宇治十帖で浮舟と表記されるのは、今帖が初めてです。

  あくまで読者による特別な呼称であって、

  作中では変わらず、「形代」とか「常陸姫」とか。

 

源氏物語では巻名からヒロインを呼称するのが通例なので、

前帖でチラッと書いた「総角の姫」も同様、吉原遊女らが好んで名乗った事から、

源氏物語巻名由来を源氏名といいます。

本来、あざみ嬢とか、ケメコを源氏名とはゆわない。

まあ自分なら、「初音(はつね)」とか「若菜」とか、現代でも遜色ないかな。

リアル平安女性がみだりに名前を口にしないのは、呪術に利用されるなど、

アフリカや南米部族っぽい考察をする小論もあるけど、お隣の朝鮮史を見れば、

元から女性に名前なんて無かったとするほうが適当かも知れない。

そもそも班田収受法に絡む戸籍整備がなければ、庶民男性だって必要なかった。

藤原氏の姻戚政治や宮中女房に名前が残るのは、そこで初めて名乗ったからで、

〇〇の女(むすめ)のように名前を知られない例も多くあるのは、

現代風にいえばダイレクトメールからの防御手段などを想像できる。

ここでいうDMとは、従者に文を遣わせ、相手の在宅時間をゲットしたのち、

夜中に閨へ忍び込む一連のコンボをいう。

名前の残る平安女性は、夜の女王である可能性。※和泉式部とか武勇伝多々

例えば源氏物語の作者が、藤原香子⇒紫式部と二段構えするのも、
これで説明できる気がする(気のせい)。

思うに、浮舟の呼称が「東屋」とか「手習」とか幾つか散見されるのは、

すべての写本を入手し難い当時の流通事情も関係するのではないだろうか。

やっぱり、自分で所持する巻名が特別なのですよ。

 

さておき、【浮舟】帖は展開が早くてドラマチックでエロシーンもあって、

中古本が高値転売できるレベルぢゃないでしょうか。穿ってみれば、

今帖が値打ちあるからこそ、八宮様の三女が【蜻蛉】でも【手習】でもなく、

【浮舟】として多数のファンに認知されたとしても過言ではない。

あらすじは冒頭に書いたとおり、前回未遂止まりだった匂宮がやりたい放題。

忍んできたのが薫と思い込んでいた浮舟は、途中で成り済ましだと気づくも、
力づくで本懐を遂げられる。1000年前の女流作家が書いた文章表現に、
かなり興奮させられます(個人の感想です)。

浮舟の宇治山荘のヤサを知るや、寝床に侵入するまでの経緯が犯罪臭くて嫌悪感。

何とゆうか、ですね。公平な視点でみれば、薫も悪いんですよ。
宇治で囲う浮舟に手を出すなと口外せず、周囲の目を気にして女房にすらしない。
ですけどね、ものすっごく主観で書きますが、
匂宮ムカつくんですけど。※宇治十帖7巻目にして、とうとう言ってやった。
このへん、読者の恋愛経験によってどちらを味方するとか、両成敗だとか、
いろいろ個人評あると思います。でも、やっぱり匂宮は許せねえ(2度目)。
てゆーか薫も中君に似たようなコト(※未遂です)やらかしてるけどね。
でもあっちは妊婦帯で萎えた薫が可哀そう、とか。
みっともないからやめなさい、みたいな諌め言葉しか思い浮かばないから不思議。
あと匂宮の口車に乗って防衛ライン突破を許しちゃった右近女房、
女としてチョロすぎて、むしろ萌える(何故)。
弁尼が積み上げたものを、右近が積み木くずししていく生産と破壊の美学。
此処までの顛末で、気になることが1つある。
右近は体臭で薫か別人か判断できなかったのか。
   
匂宮×浮舟で間違いが起きた後日、
宇治橋をネタに詠み交わした薫×浮舟のシーンが好ましい。
歌に関する評は出来ないが、浮舟の返す一句一句が底意のないストレートで、
それゆえに、素人読者の気持ちが揺さぶられる。
 
 宇治橋の 長き契りは 朽ちせじを 危ぶむ片に 心騒ぐな
 
 絶え間のみ 世には危ふき 宇治橋を 朽ちせぬものと なほ頼めきや
  
此処にきて、宇治十帖の柱たる「宇治橋」を目にするのは彩り鮮やか。
橋姫伝説は恋仲の男性を水神にNTRてしまう悲恋設定なので、
宇治橋に来れば、いつでも浮舟とチョメチョメできると考える薫に対し、
いつまでも逢瀬の場所が存在すると思わないで欲しいとかいう、
匂宮との過ちを含んだ歌意にも取れそう。なお、薫は全然理解していない。
つい先日までの、処女(おぼこ)い浮舟だったなら、
京に帰る薫の裾に縋りついて、泣きじゃくるような雰囲気もあったのだろう。
それが一転して、
「アンタに会いたいわけじゃないのよ。贈物の心配してるだけなんだからねっ!」
※注:完全に意訳です。
みたいな、オトナの余裕を感じるようになった部分を、
浮舟が「女」になってきた、と勘違いしているから冷笑(わら)える。
薫がいうところの「女」にしたのは、薫じゃなくて匂宮だってあたりが、もうね。
いや、まあ正しくは、どちらか単体でなく薫と匂宮の狭間で。というのが正解か。
   
 年経とも 変はらむものか 橘の 小島の崎に 契る心は
 
 橘の 小島の色は変わらじを この浮舟ぞ 行方知られぬ
  
匂宮、夜這い犯罪のあと拉致監禁までやらかす。
その拉致犯罪の過程で詠み交わした匂宮×浮舟の歌。
浮舟の名をほしいままにした歌が、なんと匂宮との掛け合いという事案。
薫も匂宮も、浮舟に対する愛情は変わらない(たぶん嘘)と言うが、
どちらを選ぶでもなく返歌応答しているのは、選べないのではなく、
求められたら拒めないという意思表示だと思われ(これはこれで事案)。
さっさと二条院(匂宮ハーレム)なり、三条院(薫ハーレム)なりへ、
彼女を連れ去ってしまうべきだった。
宇治山荘ではセキュリティ右近がウイルス感染しているため、守りきれない。
なお薫の理由=イモっぽい浮舟を三条院の女房に見せるのが恥ずかしい。
匂宮の理由=明石中宮、中将君、中君の三婆が口うるさい。
女二宮(薫の正妻)と六君(匂宮の正妻)が空気すぎて、もやもやする。
 
 峰の雪 みぎはの氷 踏み分けて 君にぞ惑ふ 道は惑はず
 
 降り乱れ みぎはに凍る 雪よりも 中空にてぞ 我は消ぬべき
 
拉致監禁中の匂宮×浮舟のやり取り。
反歌の「中空」が浅慮だったと恥じて、破り捨てる場面がメイン。
これは【浮舟】帖におけるクライマックスの伏線だと勝手に考えている。
歌を介した男女のTPOを身につけつつあるなかで、ちょっとした相手への不遠慮、
思っているコトを、何となく歌に込めてしまった至らなさ。
それを咎められるのを極端に恐れている彼女の胸の内が、透けてみえるようだ。
  
 眺めやる そなたの雲も 見えぬまで 空さへ暮るる ころの侘しさ
 
匂宮からの手紙で反歌がないため、歌そのものはどうでもいいとして、
この後に続く浮舟の胸中が切なく、やっぱり浮舟は薫寄りで匂宮が異物に読める。
根拠の1つである、薫が初めての男性とゆうくだりが、
肉体関係なのか世間一般の社交術の話なのか、読解出来なくて悶々とする。
もう1つ、母親である中将君が薫との決着を望んでいるから、と認識している点。
前者は許せる(萌えポイント)が、後者はダメなやつ。
 
 波越ゆる 頃とも知らず 末の松 待つらむとのみ 思ひけるかな
⇒薫から浮舟へ。匂宮との関係がバレる。浮舟、かなり重篤なダメージ。
 
 歎きわび 身をば捨つとも 亡き影に 憂き名流さむ ことをこそ思へ
 
 殻をだに 憂き世の中に 留めずは いづこをはかと 君も恨みむ
 
 のちにまた 逢ひ見むことを 思わなむ この世の夢に 心惑はで
 
 鐘の音の 絶ゆる響きに 音を添へて わが世尽きぬと 君に伝へよ
 
自撮りを覚悟した重い読み物は勘弁願いたい性分だが、
これが「源氏物語」で和歌を通じた儚さの表現とあれば、胸にくるものがある。
最後に、浮舟の心情について段階を追って整理してみよう。
 
(枡瑤斑羮君の会話を盗み聞き
此処では自撮りするなら入水かな、程度の認識で。
初めて「死」を選択肢に捉えた意味では、重い場面だった。
 
右近から浮舟への諫言
やけに彼女を庇うと思われるかもだが、右近に二心はない(はず)。
あくまで女房衆にあるのは、浮舟が幸せになれば自身も食いっぱぐれないという、
ドライで客観的な物の見方である。ただ、ひと言、
右近が語った姉の身の上話って、創作(つく)ったよね。
 
7阿ら浮舟への手紙
匂宮との関係がバレる。個人的に、かなり浮舟の立つ土台が揺らいだと思う。
 
て宮からのストーカー行為が激烈化する
薫でなく匂宮を選んだと勝手に決めつけられ、手紙を大量送付される。
 
 里の名を わが身に知れば 山城の 宇治のわたりぞ いとど住み憂き
 
 かき暮らし 晴れせぬ峰の 雨雲に 浮きて世をふる 身をもなさばや
 
匂宮のみならず、薫と双方から届く手紙に身を削られる。
既読スルー状態だが、本来はエスプリの効いた返歌を綴らねばならないので、
精神的負担は想像を絶する。冒頭で触れたように、名前と住所バレしたら、
こんな感じでストーカー被害に遭い、「自撮」の二文字がちらつく。
個人的にマヂか?と思ったのは、匂宮が浮舟宛てに、
ハメ撮り写真(自筆画)を送ってきたこと。
匂宮じゃなくて、紫式部がすげえ(笑)
 
ゲ燭、トドメっぽいやつ
宇治山荘を宿衣(とのい)警護※24時間体制の意し始めた薫大将方に、
しっぽり床入りしようと訪ねてきた匂宮一行が追い返される。
  
巷では浮舟さんのコト、悪くいうひといるけど、
彼女の本質は、あくまで純朴で、田舎育ちの、垢抜けないお嬢様だと思います。
匂宮にレイ〇゜されたのだって、そこまでは事故ですよね。
で、その後の逢瀬と手紙のやり取り。
心情は薫に寄り添い、匂宮を拒み切れずに苦悩する様子が痛ましい。
ホントはね、都びとのカッコイイ女性がするように、身につけたばかりの和歌で、
匂宮の求愛をさらっとかわしてみたかったんじゃないかなぁ。
そうする事で、薫にも、彼好みのオンナになったと認められたかった。
相手が想像以上の難物で、自分がとんでもない失態を犯したと気づいたとき、
中君にも、母親にも、そして自分を求愛してくれた二人に対しても、
申し訳ない気持ちに居た堪れなくなったのだと思います。
  
宇治十帖は「橋姫悲恋」をモチーフにした物語です。
宇治橋を挟んで彼方には、都びとの住む平安京が。
此方には、宇治の田舎風景が広がります。
宇治に留まった大君、都へ輿入れした中君。
選択肢は、それだけでしょうか。
宇治橋を守護する橋姫の旦那様は、海の底へ連れて行かれたそうです。
 
  • 2020.07.28 Tuesday
  • 00:00

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