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反逆の騎士【短編】

鉄のメイド騎士団TQ17/あつめろ!どうぶつの草原

 

TQ配達品=いろいろ
TQ配達先=いろいろ
TQ 2nd Quest=訪ねびと※本文参照
   

あつめろ!どうぶつの草原

 
「総帥、おやつをお持ちしました」
 
然も、いつもの日常とばかりに小皿を置いたメイドが退室したあと、
執務中のサンドラが珍しく、手をとめて、それを見た。
 
(お茶を持ってくることはあっても、お菓子なんて滅多に出さないのに)
 
小皿には歪な形状をとどめたクッキーが1枚、2枚。
サンドラが口に運ぼうとする途中で、およそ半分が割れ落ちて、机の上に砕ける。
 
(う゛っ.. 生焼け)
  
カリカリに仕上がらず、細部のフォルムは不明だったが、
おそらくは百獣の王、ライオンさんだった模様。かのブルースタンプ商品として、
流通域内を沸騰させた"集めろ!どうぶつの草原(サバンナ)"である。
 ※通称"あつ草"とは:多種多様の動物を模したクッキーの型抜き。任意選択不可。
  域内雇用者階級全員に配られる青汁ポイントの交換対象の1つであり、
  レア、ウルトラレアなどガチャ要素も導入されている。
 
"あつ草"に心を掴まれたのが、おもにクッキーを作ったコトもない低年齢層。
新邸のメイドたちで言えば、3人リータ娘だろうか。
  
「おら、無印!最後の生地床が乾いたぞ。好きなように抜け(型を)」
 
そして24歳にして、がっつりハマったコロナお姉さん。
最近は配達クエストが途切れると、新邸に待機していることが多くなった。
彼女の名誉のために付記しておくと、型抜きしたあとのクッキーは、
各自それぞれでオーブンに投入し、焼きをおこなう。
また小麦粉の産地や収穫時期により、クッキー生地の仕上がりに、
どうしようもない個性が生じてしまう。現在の状況では、あまり歯ごたえのない、
へにょんと折れ曲がる感じで割れちゃう、おしめりクッキーみたいなやつ。
けして、サンドラがハズレを引いたわけではない。
  
「では、抜きにかかります(型を)!」
  
3人リータのうち、最年少の無印が"うさぎさん"を構えつつ、にじり寄り、
ほぼ生地の中央にスタンプする。
 
「ああっ、リータったら!型は四隅から抜きなさいって、いつも言ってるでしょ!」
 
「お邸にきて、もうすぐ1年になるのに。まったく成長しないコね」
  
年上のクラリに、アネリに叱られて、無印リータはしょげ返っている。
調理場が姦しい。生地に粘りが強いため、中央から攻めた型は、
端っこから順番に生地を破いていかないと抜き取れない。
無印リータは年少のわりに3つも型を所有しているのだが、運悪く、
3つとも"うさぎさん"だったりする。
 
「どうぶつ型って、何種類あんの?」
 
「常に増えているようですから、非公表なのですが、200種類とも300種類とも」
  
「無印、すげえ(笑)」
  
唯ひとり、型を持っていないルチアは終始、見物人だったが、
偶に無印をからかうような手合いを入れては、涙目にさせて愉しんでいる。
続いては年長者のクラリが、虎の子の"トラさん"を。
アネリも1つだけ所有している"にわとりさん"で作業を終えた。
残りの生地は、驚異の16個所有(うち1個がダブリ)するコロナが連続スタンプ。
途中、無印の抜いた"うさぎさん"を手際よく取り上げて、彼女の皿に乗せてやる。
 
「ふ、ふええええっ(涙目)」
  
ケチがついたためか、本格的に愚図り始めた無印。
同時に、原因を作ったルチアが非難の集中砲火を浴びる。
  
「ちょっ、ちょい待て!そんなに精神ダメージ受ける事案か?これ」
  
まあ、だいたい"あつ草"に興味ない人間からすれば、こんな感じの反応になる。
どうしたものかと思案する過程で、コロナがダブリ所有しているのに目をつけた。
彼女も、わりと乗り気である。
  
「お、いいな!オレも"うさぎさん"持ってねーし。"シマウマさん"ダブってるし、
 無印さえよければ、取替えっこ。し・て・や・る・ぜ・え?」
 
「ふえっ、ふええええっ(涙目増量)」
  
ただし、言い方が悪かった。居た堪れなくなった無印が調理場を飛び出すと、
非難の矛先がルチアからコロナに飛び火する。
各自所有するポイントからして格差があるのだから、オトナ買いのコロナから、
じゃらじゃら見せつけられれば、年少組としては面白くない。
 
「つか無印3つも持ってるのに、クラリとアネリは1つだけ。何で?」
 
「女の子として、他に必要なものがあるでしょう。
 いくら流行ってるからといって、全振りするわけないし」
 
ルチアの疑問に、クラリが代表して至極真っ当な意見を述べた。
大仰な相槌を立て続けに打ったあと、これみよがし、コロナを一瞥する。
 
「ばっ、ばっきゃろう!オレだって全振りしてるわけじゃねーし。
 所有ポイントが3人リータより、数倍多いからに決まってンじゃねーか」
  
2桁に届こうかという型抜きを針金に通し、がっちゃがっちゃ言わせながら、
あまり説得力が無いように思われつつも、再び白い視線がルチアに戻ってくる。
 
(さて、どうやって無印を宥めたものか)
  
そこへちょうど、二人がサンドラに呼ばれたため、これ幸いに自室へ向かう。
偶には目先の変わった配達経路だといいなーなどと考えながら、
彼女を待つ間、ルチアは青汁スタンプ景品申請書に必要事項を記入していた。
 
「えー何?何?お前も型抜きもらうのか。
 ぎゃーっはっはっは!つ・い・に、軍門に降りやがった!」
  
得意満面のコロナに、ルチアは浮かない顔。
  
「ほれ、もうすぐ無印が奉公に来て、1年が経つとかゆってたじゃん。
 無条件で喜ぶなら、これくらい、くれてやってもいいかなーと思ってよ」
  
やがて当番メイドを連れたサンドラが姿を見せ、
ルチアはメイド宛てに申請書類を手渡す。彼女もまた、意外そうな表情をつくる。
  
「ほほお、軍門に降りましたか」
 
「ざけんな。つか用紙チラ見でわかる程、型抜きって流行ってるのな。
 おねーさんも、ちゃっかり隠し持ってたり?」
  
「冗談言わないでください。見習いメイドたちが型を抜くだけ抜いて、
 出来上がりを食べてしまわないから、難儀しているのです!」
  
流行りものの陰で火種がくすぶっていた。
そして一部始終をみていたサンドラが、メイドから用紙を抜き取ってしまう。
不思議そうな顔で追う当番メイドとルチアを他所に、
彼女は引き出しに用紙を放り込んで、代わりに型抜きを1つ、机の上に置いた。
  
「試作品の検品が終わったところです。よろしければ、お持ちなさい」
   
不作為選出が原則のはずだが、まあ責任者がいうなら手間が省けてよかった。
ルチアにしてみれば、"うさぎさん"でなければ、わりと何でもいい感じ。
  
「つか何?これ。次回シリーズ配布品?
 ちょっ.. 待てよ!UR(Urtra Rare)って書いてあるんだけどっ!」
  
コロナ悶絶。あと、虫っぽい型枠が気になって、ついでに名称欄も拾う。
  
「スカラベ(フンころがし)?」
  
マニアの間では、珍しければ問題ない感じなので、頻りにコロナが欲しがったが、
最終的に無印の"うさぎさん"とルチアの"スカラベUR"をトレード。
その後、"うさぎさん"をコロナに無償譲渡する条件で話がまとまった。
本題前が長引いたものの、サンドラと仕事の話がようやく始まる。
 
 
「これまで配達業務に限って、単体、複数の品を護送していただく段取りでしたが、
 短期での配達とは別に、少なくとも数ヶ月単位での受注期間として、
 2nd Questを引き受けていただきたいのです」
  
いわゆる短期クエストに並行して、長期クエストを重複して受ける事になる。
固定資産税償却の足しになるため、二人にしてみれば願ったりな提案だった。
 
「今度の依頼は、人探し───というより保護に近い任務でしょうか。
 統一ミュンスター家にとって大恩ある方なのですが、
 場合によっては、命の危険に晒されるかも知れない状況におかれています」
 
 2nd Quest=ミネルヴァ.W.グランベルガー/女性の捜索ならびに保護
 あくまで配達業務を本筋として、並行受注という形になる。
 別紙にて似絵、関連情報などを記した書類が添付済み。
 
「およ?ルチア、知ってる奴かい」
  
考え込むルチアに、コロナが問いかけるも、黙りこくったままである。
  
「うーん、やっぱ思い出せねーわ」
   
そんな程度の相手だった。
  
  • 2020.07.11 Saturday
  • 00:00

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