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反逆の騎士【短編】

鉄のメイド騎士団TQ13/戦慄の青汁

 

TQ13配達品=ブルースタンプ30万シート
TQ13配達先=陸の孤島グラム⇒ローゼンハイマー私領
 

戦慄の青汁

 
あまり触れないでおくとDD(※キャラ削除)したと誤解されるので消息ぺた。
ルチアとコロナの子供時代からの姉貴分として、セシリアの存在がある。
"芸術を庇護する"ヒルデスハイム家を後見とした見習い騎士だったが、
同時に盗賊、じゃなくて商人ギルドにも二股かける多角化女子でもあった。
内戦動乱時代を経て、現在は城下に事務所を構える反社ギルド支部顔役でもある。
 
「でさあ、俺ら、いまローゼンハイマー海運の傭兵やってンだよ」
 
「反社ギルドつっても、商売やってるなら、サンドラと飯食っきゃ、お得じゃね」
  
城下でセシリアと顔を合わせるたび、コロナが、ルチアが繰り広げる勧誘トーク。
毎度ながら、姉貴は歯切れ悪く話に乗ってこない。少しモヤモヤする。
 
「サンドラは根っからの商売人だからな。算盤弾けるなら、人を差別しないよ」
 
言い方。或る日とうとう観念して、頑なに折衝を避けようとする理由をゲロする。
 
「成り行きで仕方なく、人買いに加担した昔話があってだな。もにょもにょ」
 
「ああン?そんなの、サンドラも現在進行形で奴隷買って、差配してんべ」
 
「いや、そうじゃなくて、だな。もにょごにょ…今さら、顔合わせづれーだろ。
 仕事上の理由とはいえ、泣いて嫌がる幼女(※サンドラ)に、
 浣腸液ぶち込んだ過去のある反社の女が、だよ!」
 
ちょいと脳内情報処理に時間を要する。フリーズ隣り合わせ。
先の会話と後の会話の繋がりが、俄かに結びつかない。でもま姉者のことだから、
とりあえず信じられる。OK。
 
「ま、サンドラとの飯は今度でいいや。あっちの話、調べてくれた?」
 
あっちの話表記のほうがエロくない件。海運同盟と袂を分かったサンドラは、
離反側の参加資本を集めて独自の支配体制を構築。
その際、投資された循環資金が同盟に漏れ出さないための経済ブロックを敷く。
少々ケチくさいと思うかも知れないが、回収金の漁夫利を抑えるのに、
期間を設けて流通阻止するのは、みずからの経済圏を守る当然の行為だった。
むしろ、そうでなければ新体制への参加企業は募れない。
そのための手段として考案されたのが、青汁(ブルー・スタンプ)戦略である。
奴隷制維持する新体制下においては、奴隷労働者にも少額賃金が支払われる。
このとき万国共通貨幣は身請金にまわるため、一部生活保証としての青汁が、
独自貨幣証書に代えて流通する段取りとなった。
非奴隷階級に対しては、月イチ給料抱き合わせの賞与として配当される。
これには参加企業からの余剰生産品をカタログにして、
青汁所有枚数に基づき交換できるシステムであるため、労働者が得る一部賃金が、
独自経済ブロックの外側へ流出するのを防ぐ役割を担う。
で、開始から半年以上が経ち、偽造青汁の流通が報告され、
反社の女(※セシリア)のところへ事情確認の接触が行われた。いまココ。
 
「当然だが、ギルドは事前協議や通告なしに、その手の中抜き行為はしない。
 なので関知するものは何もない。みかじめ納めない非構成員の管理まで、
 ギルドが負うつもりはないよ」
 
「そっちの場合だと姉者に報告するけど、身柄はこっちで処分するつーコトで」
 
用事終了。あとは今日のうちに鉱山街グラムまで足を伸ばし、
コロナと二人がかりで青汁シートを持ち帰って来る手筈になっている。
破竜の城下を撤収、フィンケの牽く荷馬車を転がしながら、ルチアは思う。
 
(ブルー・スタンプなら"青汁"じゃなくて、"青印"じゃね?素人了見だが)
 ※作者注:この件に関しては本作のオチなので、現時点では流します。
 
 
グラム鉱山は温泉資源で潤うローゼンハイマー私領らしく、黄鉄鉱が主要鉱物
イオウを主成分とするため発火性に富み、火打石としての需要に応える。
これを貿易港まで輸送し、海外へ出荷できれば話は終わるのだが、
ぐるりを海運同盟参加の勢力圏に囲まれて、飛び地の状況になっている。
間の悪いことに、グラム鉱山からローゼンハイマー私領を繋ぐ街道沿いには、
内戦時から土着を始めた外国人の盗賊くずれが居留地を形成していた。
裏で資金提供し、飼っているのは同盟の息のかかった貴族筋で間違いない。
ライフラインを止めるような宣戦布告行為は以ての外だが、
小規模な輸送隊で鉱物資源を運ぼうものなら、ひとたまりもない。
 
「つっても、わしとロンだけで充分、殲滅可能な戦力でしかないだろ」
 
「そこはほれ、通商間で血生臭い小競り合いは避けるとかゆう、いつものアレ」
 
いつものアレ(重複)である。公式での約束事ではあるけれど、
喧嘩っ早い同盟側の貴族坊ちゃが暗躍する、ウザイいつものアレ(3回目)。
そんな理由から、グラム−私領間の物資流通は、グラム向けの生活物資と、
私領に向けた膨大な青汁シートがやり取りされているのみだった。
あっち側の人間にとって、青汁シートなど紙屑同然に等しい。
 
「うお、シート回収に行くたびカタログ更新されていて、一日中、
 眺めていても飽きねー。"あつめろ!どうぶつのサバンナ"すっげー欲しい」
 
「何じゃ?それ」
  
青汁シートの交換景品を食い入るように見ているコロナに、
手綱を捌くルチアが興味半分で問いかける。
 
「いろんな動物をあしらった、クッキーの型抜きだよ。もらえるの不作為だから、
 調理イベントあるたび、交換会とか盛り上がってるんだぜ?」
 
コロナのミーハー成分、発見。ルチアは道すがら、適当な相槌でやり過ごす。
何事もなく新邸へ持ち帰った際に、近衛アグネスから、
ブルースタンプ偽造していた小規模組織が捕まったという話を聞く。
  
「半グレの少年たち数人って状況かな。首謀者がいるのか、現在のところ不明。
 動機は老若男女で流行ってる例の、ほれ、動物の型抜き?」
 
此処でも型抜きの話がでた。ルチアは生返事。
ただ、連れて行かれた先がローゼンハイマーの私設警備屯所でなく、
王宮警備隊という国家権力が介入したことが意外に思われた。
 
「ゆくゆくは私領に引き渡されて、被害額を労働弁済する羽目になるだろう」
  
型抜きに、それ程の価値があるものか。憤るコロナと裏腹に、ルチアは生煮え。
だが治安部隊が関わった理由は型抜きではなかった。アグネスが話を続ける。
 
「お前らが運んだブルースタンプ、な。
 あれはグラム鉱山の黄鉄鉱と一緒に算出される、瑠璃石で着色されてるんだ。
 今回、偽造されたものは植物色素由来のインディゴ(藍染め)らしいが、
 幾ら色合いを似せても、結晶体と煮汁ではルーペで確かめれば一目瞭然…」
 
「いや、鑑定所見じゃなくて、青汁の価値観はよ」
 
型抜きも青汁も等しく、馴染めないルチアが表情で拒絶反応をアピールする。
アグネスのほうは、それで悟ってくれない彼女が面倒くさそう。
 
「いやっ…だからっ…瑠璃石顔料ってのは、形を変えたグラム鉱山からの、
 れっきとした輸出交易品なんだ。
 植物染料も芸術作品になれば値打ちも付くだろうが、
 瑠璃石顔料だと、それ自体が高額取引品目になる。
 ブルースタンプは私領ブロック経済枠外でも価値を持つ、銀兌換券なんだ」
  
詳しい説明はよく分からないが、つまり、捕まった少年たちのやったコトは、
通貨偽造に順ずる犯罪だったというFA。
現在のところ、私領外での価値について公的には触れられていない。
ブロック流通経済での投資と配当を繰り返し、資本体力を培ったうえで、
少しずつ枠外への資本流出を模索する事になるだろう。
ブルースタンプは、その際に異なる経済圏のリンクを円滑にする役割を担う。
 
「配達終了早々で悪いが、セシリアには急ぎ、伝えておいてくれるか?」
  
 
翌日、城下の反社ギルド事務所で、ルチアは事後報告を行う。
セシリアは、少し翳の差す表情を見せながら、語って聞かせる。
 
「昨日、王宮警備隊に連行されるガキどもを往来で見てたよ。
 年端もいかない頃から面倒みてやった顔も、何人かいたかな。
 前にも言った通り、ギルドへの保護料納金なしに利益総取りだったから、
 こっちは何もしてやれるコトもなかったが、
 馴染みある子供がひとり、助けて、助けて、みたいな目で訴えてくるんだ。
 私も、かつてそこに居たから、居た堪れなかったよ」
  
やっていいコトと、やっちゃいけないコトを子供に教えるのが大人の役割。
もう一歩踏み込んで、手を出してはならない境界線を教えるのが反社の役目。
  
「そろそろ、年貢の納めどきかなぁ」
  
子供の頃、盗賊ギルド(当時)に身を寄せれば、何でも出来ると思っていた。
でも実際には、ギルドのなかで雁字搦めな制約がのし掛かってきた。
そうやって人間は、自由の履き違えに気づき、学んでいく。
 
「おたがい、生きていくの辛いぜぇ」
 
別れ間際、セシリアはルチアに、サンドラとの会食を言伝てる。
表面上は不干渉を装っても、水面下での連携は取らざるを得ない。
必要であれば、レオやサンドラが吐き出す泥も被ろう。
ほんの微かながら、彼女に、そんな使命感じみたものが芽生え始めていた。
   
  • 2020.06.13 Saturday
  • 00:00

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