Calender

S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< July 2020 >>

Categories

Archives

Recent Entries

TMSの軌跡【野球小説】

グッバイロード西海岸4-01

JUGEMテーマ:自作小説

これより欠席裁判を始める

  

グッバイロード西海岸4-01

  
日韓親善野球は最終7回、1点先取された日本が土壇場で追いつき、
引き分けのまま終わりました。
着替える間もなく、安里がフェンス越しの美鈴に張りつくと、
彼女は迎えにきた日本人らしき女性とスタンドに隣り合っていて、
このまま一緒に日本へ連れて行くという。
諸処の問題は彼女…麻生らがよく知る紅茶館アリスの美人店主、
野中粕美さんによって、すべて解決済みになっていた。
  
 美鈴ちゃん
「あのっ…でもっ…恐い男の人とか、跆拳道の達人とかっ!」
  
 粕美さん
「大丈夫、大丈夫。圧倒的武力差に裏づけされた話し合いで、
 解決しない問題なんてないのよ。」
 
 麻生その他一同
(いま、さらっと圧倒的武力差とか…)
   
そのまま金海国際空港まで同道し、
京都へ帰る美鈴と粕美、関西リーグ戦に合流する社会人野球2部組が、
先に離陸する大阪伊丹行きに乗り込む。
その際、安里が美鈴の電話番号を聞き出そうとするも、
それを聞いていた粕美さんは思い出したように美鈴から携帯を受け取り、
SIMカードを抜き取ったうえで、
雑巾しぼりに破壊するのを目の当たりにして、凍りついたという。
ちなみに安里に対する保護者権限発動というよりは、
美鈴の姉シノから、現在保有している携帯電話を破棄し、
日本で買いなおすよう指示されていたからである。
安里がうざいと思わなければ、これ見よがし壊す必要もないのだが。
ところで、ユニカレ選抜のうち麻生や富井、輝子ら関西在住学生は、
本来なら社会人組と同じ伊丹に帰る予定だったのだが、
同時期に米国西海岸を回っていた遠征組にアクシデントが発生。
もとより、西井総監督のみロサンゼルスに飛ぶ段取りだったのだが、
右手負傷の安里を除くユニカレ選抜が急遽、合流することになった。
  
西井監督が黒崎主将代行らにゲートまで見送りに行ったため、
一旦、空港ロビーの喫煙コーナーには麻生たちだけが取り残される。
ちなみに愛煙者は涼見、安里、輝子の3名。
麻生と富井と中路は付き合いで引っ張り込まれただけ。
  
「これより、欠席裁判を始める」麻生
  
「論旨を聞いたわけじゃないが、
 きっと欠席裁判の用法が違うと思うぞ」安里
 
「米国遠征の連中、アクシデントつか連敗スタートだって?」富井
 
「練習試合の予定5連戦中、初っ端2敗か。
 ゆうとくけど、おどれらも韓国相手に引き分けやからな」輝子
 
「得点源として連れて行ったはずの走り屋と4番打者が、
 試合半分と1打席しか出なかったんだから、
 引き分け止まりの原因はそいつらに聞きたい」中路
 
「(無言)」涼見&麻生
  
「負けは負けでも初戦4-0。2戦目13-0とか酷過ぎるわな。
 麻生のいうように、選抜選手が真っ当に招聘に応じとったら、
 連続完封負けなんかあらへんかったやろ」輝子
  
「そこで欠席理由を明確にさせておこうと思った。
 京都校は上子も妻人も阿部も学外生だし、木村は──」麻生
 
「いや、木村って最初から呼ばれてないだろ」富井
  
「優勝校の主将が呼ばれないって、ある意味すげーな」安里
  
「ユニカレ選抜って捕手以外ガチ固定なんだよ。
 そもそもタレント軍団の沖縄校は何があったんだ?」中路
 
「マイケル・キャブ?」麻生
 
「マイケル喜屋武(きゃん)な、あいつ学校辞めたよ。
 米国か日本かの国籍選択あってさ。
 まあ軍隊入るつってたから選択は当然として、
 海兵隊か自衛隊かで迷って、結局世界最強の米軍を──
 あいつ沖縄で志願したら沖縄で就職できると思ったらしくてさ。
 カリフォルニアベースに連行されて、話が違うーとか?」安里
 
(アホやな)輝子
 
「ダブルゼータのおっちゃんは?」麻生
 
(ダブルゼータ?)輝子
 
「ホント、沖縄はタレント揃いだよな。別の意味で」富井
 
「ダブルゼータ、いまごろインド洋な」安里
 
「いま、インドじゃなくてインド洋つった?」涼見
  
「沖縄校は海洋水産学部ってのがあってさ。
 単位やばい奴の救済で半年〜1年間船に乗り込んで、
 教授の課すデータ取りしてくるのがあるらしいのよ。
 それでダブルゼータやばかったから、今頃インド洋。
 小遣い稼ぎも狙ってマグロ漁船な」安里
 
(どいつもこいつも)輝子
 
「タレントといえば、大阪校も負けてないだろ」富井
 
「ねーねー、あほの石田は?」麻生
 
「一番人材派遣しとるうちらに因縁つけられてもな。
 まあ朴ちゃんは韓国経由で申請せなあかんかったから、
 旅券手続きが間に合わんかったんや。
 あと平(※あほの石田)は、関西ブロックのもんは知らんやろが、
 トーナメントの時──試合中やないんやけど、
 安里と同じ右手甲をゆわし(骨折)てもてな」輝子
 
「あーだから猛打の大阪相手に中路が完封できたのか」富井
 
「いや、それ全然関係ないし」中路
 
「で、石田は今頃、養生してるの?」麻生
 
「まさか。うちが留守する間、
 店(ロデオ)でビアケース運んどるで」輝子
 
「ここまで登場人物全員、正真正銘のアホ確定」中路
 
「俺、何もしゃべってねーし。勝手に混ぜるんじゃねーし」涼見
 
離発着を繰り返す滑走路を横目に、言いたい放題しているところ、
ようやく西井が戻ってきた。
  
「スポーツメンが紫色の煙にまみれてンじゃねーよ。
 つか未成年だろ、お前ら」西井監督
 
「数え年20歳でーす。オトナでーす」輝子
  
「うえーい」安里&涼見
  
(韓国で余計なコトばかり覚えやがって、クソが!)西井監督
  
そのまま喫煙室のソファに座り込んだ西井は、
煙草を燻らせるまでもなく、深い加齢臭を帯びた息を吐いた。
その後、成田国際空港経由LA行きの振り替えメンバーを告げていく。
京都校の麻生と富井、東海校の涼見、東京校の中路、そして…。
  
「そうだな…保険のために輝子、お前も来てくれ。」
  
「は?」
  
最後、輝子の顔をしげしげと見つめた西井監督が、
思いつきだとあからさまに分かる態度で上記5名の米国行きを決める。
野球に直接関係ない輝子を保険扱いにするあたり、
まったく以って嫌な予感しかしない。
黒崎ら社会人団体のいなくなった閑静なロビーで、
成田行き西井+5名に、那覇への帰途となる沖縄校の安里を加えて、
ほぼ雑談に近いミーティングのやりとりがあった。
西井監督が遠くを見つめつつ、ちょっとした問題について語り出す。
  
「冬季リーグ終了後の調整みたいな練習試合5戦なんだがな。
 すでに知っての通り、出だし連敗との報告があった。
 試合自体は経験値稼ぎで、こっち(日韓戦)より重要度も低いが、
 ある目的のため、あまり無様なゲームを続けるわけにいかねんだわ。
 そーゆー意味で、お前ら全員が保険みたいなものだな。」
  
(だから、輝子は何で?)
 
「麻生の打、中路の投、涼見の走に期待している。
 富井…お前の武器(鉄砲肩)は見た目がいい。
 それに、常に傍へ置いておけば、いかにも重用していると思われて、
 スポンサー様からカネが引っ張ってこれる。
 西海岸遠征における重要なファクターだ。見せ金で結構。
 カネは必ずあとで返ってくる(意味不)。
 輝子は当面、飲み食い観光してくれていい。
 副務関連の仕事は、別にやってくれてる奴がいるんだ。
 お前の役割は最終局面で必要不可欠だからな。」
 
(だから、輝子は何で?)
  
麻生が横槍を入れようとするが、ふと別の疑問が口を突いて出る。
  
「あれ?無様2連発って、うちの小久地も投手登録してるよね。
 あいつ、打ち込まれたのか?」
  
一瞬、麻生の言葉に力ない視線を天井へ泳がせたあと、
でろんと目玉を転がしてきた。
  
「小久地のやつなー(棒)。
 肩に違和感あるつって登板回避したんだけどなー(棒)。
 病院に行くつってチームから離れたあと、
 帰ってこなくなったー(棒)。
 いまから身代金交渉に行かなきゃならねー(棒)。」
  
米国西海岸にて絶対的エース小久地の失踪!
カネは御曹司富井からがっぽり引き出せ!
最終保険に輝子さん帯同!
「TMSの軌跡」第4部グッバイロード西海岸編、スタート。
  
  • 2018.12.08 Saturday
  • 00:00

Comment
Send Comment