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36「桜の園」チェーホフ

JUGEMテーマ:読書

読書感想文036「桜の園」チェーホフ

     
 : ロシア文学でトルストイとドストエフスキー推しは俄か。
   通はチェーホフの風潮あるが、さておき。
    

識字率の影響もあり、小説より舞台劇のほうが大衆文化だった。

読んで耽るより、観て楽しむほうが教養で人を規制しない。
洒落本や滑稽本など読本文化は特異っちゃそうだけど、
その日本でさえ、活字の前に舞台芸術がある。
和洋問わず、舞台小屋には売春の影もつきまとうが、
気取ったよそ行きふうで、客に体裁を繕わせておいて、
わりと下衆いストーリーが文化を底支えするものも多い。
「桜の園」は女所帯の没落貴族が、
家と土地(※桜の園)を競売にかけられるまでの数ヶ月間、
如何ような結末に定められるかを見守る物語である。
メインは金銭感覚に疎いラネーフスカヤ夫人と、
ワーリャ(24歳)、アーニャ(17歳)ふたりの娘。
あとメイドオタ=ドゥニャーシャにも評価が高い作品。
女家庭教師もついてくるので、お好きなほうを。
  
舞台らしく、極端過ぎるほどに各々個性が突き抜けている。
所謂、決まり文句を繰り返すのも取っつき易い。
ロシアの桜が満開になるのは5月だそうだが、
それでも朝の気温が氷点下とか笑わせてくれる。
我が身のことを何ひとつ決められない登場人物たちに、
半ば呆れ、イライラさせられながらも、
親の遺産で細々と生を全うしていくのだと思うと、
儚くもあり、物悲しさを感ぜずにはいられない。
だが物語前半までに、女役すべてに相方の目処がたっているので、
その辺、どのようにまとまるのかが愉しみ。
   
私は「桜の園」には旬があるのだと考えていた。
5月満開の時点で決断をしていれば、それなりの値がついたものを、
8月の競売まで手をこまねいた代償に、花は散り落ち、
資産価値を目減りさせた樹々が残るものと、悲観的だった。
優柔不断に対するペナルティを弾くあたり、我ながら下衆い。
筋書きは、あくまで喜劇に終始するのであるが、
ついに「桜の園」は人手に渡り、一家は使用人もろとも、
離散するエンディングとなる。
ずっと匂わせてきた男女の組み合わせは、ちょっと意表をつかれた。
商人ロパーヒンは、おどけ者ながらも、
どこか世間ズレする住人たちの中で、最もまともらしい人物だ。
喜劇の中に哀愁を感じる点で、チャップリンを想起させてくれる。
その彼と養女ワーリャとの恋も、納得がいかない。
  
 おまっ…! 泣くくらいなら…!
 
 当時のロシアの24歳つったら、断崖絶壁だろが!
  
思いっきり感情移入させられた辺りで、ふと思った。
最終的には、全員、自分で決断してるじゃないか。
終幕のプロポーズでは、ワーリャ(愛称)を正式名で呼びます。
ちょっと、心を擽られるシーンです。
彼女は、英語名だとバーバラさんになるのかな?
彼女の決断に対する代価は、「桜の園」が伐られるのを、
目の当たりにせず済んだ事だろうか。
この時代に大衆迎合されるロシア文学は、
登場人物が幸せになっちゃいけない縛りでもあるのだろうか。
考えるだに、ちょっと怖い。
 
 おかしいな?現代日本アニメの年齢設定だと、
 ワーリャ17歳、アーニャ14歳が妥当なんだが…。
 
 女家庭教師シャルロッタ戸籍喪失のため年齢不詳ひどい…。
  
「桜の園」は、財を成した平民の手に渡ってしまったが、
農地開放により貴族と小作人の主従関係を断たれるのを、
よしとしない旧態人の声も幾らか目についた。
旧態制度の否定は、
時代時代を懸命に生きた老世代への否定になってはいけない。
もう、無理な願いかも知れないが、
春を迎えたら、新たに芽吹いた桜を愛でに再訪したい。
 
 ワーリャ、お前、トウがたってるだろ。
 摘み取って、味噌に変えてやんよ。
  
  • 2018.09.15 Saturday
  • 00:00

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